血便について

便に血液が付着している・混じっていることを「血便」と言います。
肉眼ではっきりと血便と分かるもの、肉眼では判断できないながら便潜血検査で陽性であることで血便が分かるものに分けられます。
血便外来では、この血便についての検査・診断・治療を行います。当院では、大腸カメラ検査による血便の原因の診断、ポリープの切除などを行っております。
血便は胃腸・肛門どちらが原因のこともあり、「消化器内科」「肛門科」どちらも受診しないと診断がつかず、症状も改善しないこともあります。当院は「消化器内科」「肛門科」いずれについても専門的な診療を行っており、緊急性の高い場合には当日の緊急大腸カメラ検査も行うなど可能な限りのご対応をさせて頂いております。
以下のような場合には、お気軽に当院の血便外来にご相談ください。

- 明らかな血便が出た、血便らしいものが出た
- 黒い便(タール便)が出た
- 下痢が赤っぽい色をしていた
- 血液とともに、粘液が付着している(粘血便)
- 下着、トイレットペーパーに血液が付着した
- 便潜血検査で陽性だった(一度でも)
検査をせず血便を放置していると…
血便があった場合、もっとも多い原因疾患として切れ痔やいぼ痔などの「痔」が挙げられます。それ故に「痔だろうな」と自己診断してしまう人が多く、血便は放置されがちです。
しかし、大腸がんや潰瘍性大腸炎といった重大な病気、それ以外にも大腸憩室炎や虚血性大腸炎といった大腸の病気が原因となるケースが少なくありません。特に大腸がんを放置した場合、命の危険が高まります。
もちろん、「血便=大腸がん」と決めつけることも、精神衛生上よくありません。原因を調べ、適切に対応・治療するためにも、血便が出た時、便潜血検査で陽性だった場合にはお早めに受診をお願いします。
また痔についても、治療は必要です。痔の診断・治療にも対応しておりますので、安心してご相談ください。
血便の色で分かること
基本的に、出血部が肛門から遠くなるほど、便に付着する・混じる血液の色は濃くなります。
便の一部または全体に混じる血液の色を観察することで、おおよその出血部・疾患の予想ができます。
なお、血便が必ず毎回出るとは限りません。血便、血便らしきものが出た場合には、スマホなどで撮影していただき、受診の際に拝見できれば、検査の選択・診断に役立ちます。
黒色便
全体または一部が黒くなった便です。その黒色がコールタールのようであることから、「タール便」とも呼ばれます。
血液が胃液と反応することで、このような特徴的な色となります。
主に胃がん、食道がん、胃・十二指腸潰瘍などの病気が疑われます。食道から胃、十二指腸を観察できる胃カメラ検査をおすすめします。
暗赤色便
小腸・大腸などで出血した場合に、暗い赤色の便が出ることがあります。血液が腸管の消化液と反応することで、このような色になります。
主に、感染性腸炎、大腸憩室炎などの病気が疑われます。大腸カメラ検査、腹部エコー検査などを行います。
鮮血便
採血の時に見られるような、真っ赤な血液の付着が認められます。
血液の量はさまざまで、トイレットペーパーに付着する程度の少量のものから、便器が真っ赤になるほど大量のものまで見られます。
痔、直腸がんなどの病気が主に疑われます。大腸カメラ検査、直腸診などを行います。
粘血便
粘液と血液が混じったイチゴジャム状のものが便に付着しています。また、粘血だけが肛門から出てくるということもあります。
主に、赤痢などの感染症、潰瘍性大腸炎、クローン病などの病気が疑われます。大腸カメラ検査を受けることをおすすめします。
血便の原因となる病気
血便があった時には、主に以下のような病気が疑われます。
血便の頻度、血液の量と病気の重大性には相関関係はありません。「たまのことだから」「少量だから」といったことで油断せず、一度でも・少量でも血便が認められた場合には、必ず当院にご相談ください。
痔
多くは、便に鮮やかな赤色の血液が付着する血便として見つかります。
切れ痔の場合、基本的に出血は少量です。排便時・排便後の肛門の痛みなどの症状が見られます。
いぼ痔の場合、便が出にくい、排便時の出血などの症状が見られます。いぼは歯状線の内側または外側にできますが、内側にできた場合も進行すると肛門から外に飛び出るようになります(脱出性内痔核)。
大腸がん・大腸ポリープ
大腸のがんやポリープと便が擦れ、血便が認められることがあります。
基本的に出血は少量です。必ずしも肉眼で確認できるとは限りませんが、もともと自覚症状の乏しい大腸がん・大腸ポリープにおいて血便は代表的な症状と言えます。
一方、まったく出血が起こらないまま大腸がんが進行するということもあります。何らかの症状がある場合、便潜血検査で陽性だった場合はもちろんですが、40歳以上の方は年に一度の定期的な大腸カメラ検査をおすすめします。
なお、がん化のおそれのある大腸ポリープについては、大腸カメラ検査で発見次第切除することが推奨されます。当院では日帰りの大腸ポリープ切除として対応しております。また、大きめの病変や、切除の難しい病変を認めた場合でも先進施設レベルの治療を実施しております。
潰瘍性大腸炎・クローン病
どちらもはっきりとした原因が分かっておらず、治療法も確立されていないことから、厚生労働省より難病の指定を受けています。
症状としては、下痢、血便(粘血便になることも)、発熱、腹痛、体重減少、貧血などの症状が挙げられます。
難病ではありますが、治療により症状をコントロールし、以前とほとんど変わらない生活を取り戻すことが可能です。
大腸憩室炎
大腸の壁が外側へと部分的にくぼみ、憩室が生じることを「大腸憩室症」と言います。そしてその憩室で炎症が起こる病気が「大腸憩室炎」です。
少量の血便、腹痛、便秘、場合によっては発熱などの症状が見られます。
虚血性大腸炎
動脈硬化などにより大腸の血流が低下することで炎症が生じ、突然の腹痛(主に左側腹部)に続いて下痢が生じる病気です。
普段から便秘気味の方や、細身の女性に起こりやすいという特徴があります。
炎症部から出血がある場合には、血便が認められます。
腹痛は強く、冷や汗や吐き気などを伴うこともあります。内視鏡検査により診断することができます。
多くの場合、おなかを休めて安静にすることで改善しますが、稀に腸が壊死してしまうこともあり、正しい診断が大切です。
感染性腸炎
細菌やウイルスによる感染によって起こる腸炎です。血便を伴うケースのほとんどが、サルモネラ菌や腸炎ビブリオ、クレブシエラ、赤痢菌、病原大腸菌、カンピロバクターといった細菌を原因とする細菌性腸炎です。
その他、下痢や発熱、腹痛、吐き気・嘔吐などの症状も見られます。
問診により原因菌をある程度推測することができます。
便培養検査や大腸カメラ検査などにより確定診断します。
細菌性腸炎が疑われる場合、抗生剤を服用することで早く治すことが期待できます。
偽膜性腸炎
なにか他の病気のため抗生剤を服用した後に下痢や腹痛などの症状で発症します。抗生剤により腸内細菌のバランスが崩れ(善玉菌が減少し、悪玉菌が異常増殖する)、悪玉菌が賛成する毒素が粘膜を傷つけることで炎症が起こります。
血液や粘液の混じった激しい下痢、腹痛、発熱などの症状を伴います。便中毒素の確認や、大腸カメラ検査により診断します。悪玉菌に効く特殊な抗生剤を服用することで治療します。
便潜血検査陽性と言われたら
大腸がん検診として広く行われる便潜血検査では、便の中に潜んでいるわずかな血液を検出することができます。簡便な検査であるため、スクリーニング検査(リスクの高い人をふるいにかける検査)として有用ですが、出血の原因や病気までは特定できません。
便潜血検査で陽性と言われた場合には、精密検査として大腸カメラ検査を受ける必要があります。大腸カメラ検査では、大腸がん、炎症性腸疾患、虚血性大腸炎などの多くの大腸疾患を早期発見することが可能です。また当院では、がん化のおそれのある大腸ポリープの日帰り切除にも対応(大きな病変や、難しい病変でも対応可)しております。
便潜血検査で陽性だった場合には、お早めに当院にご相談ください。
血便が出た場合の検査
鮮血便、暗赤色便、粘血便が出た場合、便潜血検査で陽性だった場合には、直腸診や大腸カメラ検査を行います。
多くの大腸疾患や痔の診断、止血処置、大腸ポリープ切除が可能です。
黒色便(タール便)の場合は、食道や胃、十二指腸からの出血を疑い胃カメラ検査を行います。
食道・胃・十二指腸の多くの病気の診断、止血処置が可能です。また組織を採取して確定診断を行うことや、ピロリ菌検査を行うことも可能です。
当院では、専門医による鎮静剤を用いた苦痛の少ない内視鏡検査を行っております。また、胃カメラ検査・大腸カメラ検査を同日に実施することも可能です。
どうぞ、安心してご相談ください。