痔ろう

痔ろうについて

痔ろうについて

痔ろうは、肛門周辺の皮膚表面と肛門内部をつなぐ異常なトンネルのことです。「あな痔」と呼ばれることもあります。通常、肛門腺の感染によって発生します。感染があると、膿が肛門腺から組織内に広がり、肛門周辺の皮膚表面に向かって膿の袋(膿瘍)が形成されます。その膿瘍が破裂または外科的に排出された後、残った通路が痔瘻となることがあります。

痔瘻は痛み、不快感、時には膿や血の排出を引き起こすことがあります。完全に治療するためには通常、専門的な手術が必要で、感染した組織を取り除き、トンネルを閉鎖することが推奨されています。

痔瘻の原因には、肛門腺の感染、慢性的な炎症性腸疾患(クローン病など)、外傷、以前の肛門手術などがあります。症状や治療法は個人によって異なるため、上記に当てはまる症状がある場合はお早めにご相談ください。

痔ろう・肛門周囲腫瘍の
症状

痔ろう

  • 肛門周囲の腫れ、痛み
  • トンネルが形成され、皮膚側から膿が出る

肛門周囲腫瘍

  • 肛門周囲に膿が溜まっている
  • 肛門周囲の腫れ、痛み
  • 38度以上の高熱

痔ろうの原因
(なりやすい人・性別・
年齢)

痔ろうの原因(なりやすい人・性別・年齢)肛門の皮膚と粘膜の境目には、歯状線があります。その少し内側に、肛門陰窩というくぼみが存在します。
肛門陰窩から細菌が入り込むことでまず肛門周囲膿瘍が発生し、その後膿瘍が自壊や切開により排出されると皮下組織・皮膚とつながるろう管(トンネル)が形成され、痔ろうとなります。
また、裂肛(切れ痔)から発生する痔ろう、クローン病に合併する痔ろうなども頻度は高くありませんが存在します。
排便時に強くいきむことで、肛門陰窩に細菌が入り込みやすくなります。そのため、便秘や硬い便でいきむ習慣がある方は、そうでない人と比べると肛門周囲膿瘍・痔ろうになりやすいと言えます。繰り返しの下痢もまた、肛門周囲の皮膚への刺激や感染のリスクを高め、痔ろうの原因となる可能性があります。
特に30~40代での発症が目立ち、一部の研究ではやや男性に多い傾向が示されています。

痔ろうを放置すると…

痔ろうは自然治癒することは稀です。痔ろうを放置していると、トンネルが枝分かれし複雑化してしまいます。
トンネルや膿によって肛門括約筋や静脈が障害されるなど、治療(手術)の難易度が高くなり、治療後の肛門機能の低下、快適な排便の困難などを招きます。また、長期間の放置によって、痔瘻から癌(痔瘻癌)が発生することもあります。
「おしりの症状があるけど病院に行くのが怖い・恥ずかしい。」という気持ちは、誰もがお持ちのものです。当院ではそのような患者さんの不安に寄り添い、安心していただけるような診療を心がけています。
受診した結果が痔瘻ではないことが判明すればホッとして頂けると思いますし、痔瘻だとすればその後の治療プランも一緒に立てていくことで重症化を未然に防ぐことができます。
是非、思い切ってお早めにご相談ください。

痔ろうの検査

特徴的な症状を持つため、医師の視診・触診によって診断できます。
重症度の把握、治療方針の決定のために、以下のような検査を行います。
これらの検査を通じて、痔瘻の正確な位置、深さ、および周囲の組織への影響を評価し、適切な治療計画を立てることが可能になります。痔瘻の診断や治療は複雑であるため、専門性の高い診療が必要です。

肛門鏡検査

肛門鏡検査肛門鏡という筒状の器具を肛門に挿入し、肛門内部を詳しく調べ、痔ろうの内部開口部を探します。

肛門超音波検査

肛門に機器を挿入し、超音波検査を行います。トンネル、膿の状態を把握することができます。

大腸カメラ検査

大腸カメラ検査痔瘻は炎症性腸疾患の一つであるクローン病の一症状として発生することがあります。この疾患は胃腸全体に影響を及ぼす可能性があります。大腸カメラ検査によって、肛門周囲の問題のみならず、腸の炎症、潰瘍、狭窄(狭くなること)、その他の異常を検出し、炎症性腸疾患の診断に役立てることができます。

CT・MRI検査

炎症が強い場合には、CT検査、MRI検査が必要になることもあります。
MRI(磁気共鳴画像法): 痔瘻の正確な経路や深さ、周囲の組織や筋肉への影響を詳細に映し出すことができます。特に複雑な痔瘻や再発性の痔瘻の評価に有効です。
CTスキャン: MRIが利用できない場合や、特定の状況下で痔瘻の位置や関連する膿瘍を確認するために使用されます。
CT検査、MRI検査が必要になった場合は、提携する病院をご紹介します。

痔ろうの治療
(メリット・デメリット)

痔ろうの治療では、手術が必要になります。
手術には、いくつか種類があります。それぞれの手術の特徴、メリット・デメリットをご紹介します。

瘻管切開開放術

肛門括約筋を切開し、トンネルを解放します。その傷が治癒することで、トンネルが消失します。
主に、浅い痔ろうに対して行われます。
メリット:根治性が高く再発がほぼない。
デメリット:入院が必要になる。

シートン法

トンネル、肛門を通るように医療用の紐を通して輪にし、その紐を少しずつ縛ることで、トンネルを肛門側へと移動させ、最後には消失させる治療です。
メリット:切開は不要であり、侵襲が少ない。
デメリット:縛る時に多少の痛みがある。また紐を長期間つけたまま生活する必要がある。

くり抜き法
(括約筋温存術)

トンネルをくり抜き、その入り口を閉鎖する手術です。
メリット:肛門機能を温存しやすい。
デメリット:後方の痔ろうには向いていない。